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東京高等裁判所 昭和32年(ラ)20号 決定 1957年4月03日

抗告人 丸久鋼材株式会社

主文

本件抗告を却下する。

理由

本件抗告理由の要旨は「抵当権実行に基く不動産競売手続において、競売期日はこれを利害関係人に通知するを要することは競売法第二七条第二項によつて明かである。然るに本件競売手続においては、その競売期日の通知が債務者兼物件所有者である日本線材工業株式会社に対し適法にせられていないのであつて、抗告人は右債務者会社に対する前渡金債権の債権者であるから、右債権保全のため、右債務者会社に属する競売手続の違法を訴える権利を代位行使して本件抗告に及ぶ」というにある。

しかし競売法による競売において競落許可決定に対し抗告をすることのできる者は、同法第三二条第二項によつて準用せられる民事訴訟法第六八〇条の規定によつてこれを定むべきであり、右法条所定の利害関係人は、競売法による競売の場合にあつては同法第二七条第三項に列記せられた者に限定せられるものと解すべきであつて、法律が右のように抗告人を限定したことから考え、右抗告権は債権者代位権による代位行使には適しないものと解するのが相当であるから、抗告人主張のような代位権行使による抗告は許されないものと解しなければならない。

よつて本件抗告を却下すべきものとし、主文の通り決定する。

(裁判官 薄根正男 奥野利一 山下朝一)

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